茶柱横町 茶柱横町入口へ
 
 
プロフィールを見る
前を見る 次を見る

井上あきら習作篇 その三十四 当季雑詠


「梅雨」
額の花咲き初む朝の集ひかな


七掛けで数ふ齢や衣替


先頭の車輌から入る走り梅雨


負の時期を熟成に変ふ梅雨入かな


華甲過ぎ邂逅したり梅雨晴間


いま撮りしラテンの薔薇を待受に




<字句補足説明>
【本稿の季語の説明については その多くを角川書店編
「第三版俳句歳時記 夏の部」によっています】

今回の主題は「梅雨」
その梅雨も一言ではすまない 多様な表情をもっています
最近は 昔の梅雨の情緒がなくなり 亜熱帯地方の雨季のような豪雨も
鬱陶しいと感じるばかりではなく 梅雨と遊んでみたいもの
このころに実った梅が蒸留酒に漬け込まれ 
1〜3年熟成されて梅酒になる
大手のメ−カ−になるとトン単位の梅を
数万リットル単位の蒸留酒に漬け込むとか
去年の「梅雨」では池内淳子主演の「梅雨のあとさき」の話をした

「額の花」(がくのはな)が夏の季語  額紫陽花(がくあぢさゐ) 
ユキノシタ科の落葉低木 梅雨のころの代表的な花
そもそもユキノシタは日陰の花 じめじめした露地に咲く
紫陽花(あぢさゐ)の本当の花は地味で顆粒状
われわれが花と思って愛でているのは 実は四枚の萼(がく)
「四葩」(よひら)の異名はこれに由来する
その萼の集合体が あたかも大輪の花のように見える
地味な花に虫や蝶を引き付けるカモフラ−ジュ
通常 酸性土では青 
アルカリ性土では赤紫色を呈する
咲き始めは白で
しだいに色が変化するので「七変化」という異名がある
「七段花」(しちだんか)というヤマアジサイの種類も
朝日新聞連載(日付不詳)「花おりおり」文・湯浅浩史 写真・茂木透
簡潔に記述されているので全文引用させていただく
<この名が図と共に出るのは 19世紀前半
シ−ボルトの「フロラ・ヤポニカ」と
本草学者 水谷豊文や岩崎潅園の書による
装飾花が星形の八重咲きになったヤマアジサイ
一目でわかる特異な花姿だが その後存在は幻に
再発見されたのは1959年 六甲山中
ただし やや葉が細い>
私はかつて六甲山・森林植物園のアジサイ園で見たことがある
この句「咲き初む朝」で白い朝 さて何の集いだろう・・・
山口青邨に<赤門は古し紫陽花も古き藍>がある
視覚的には深い赤と藍の色彩の対比が鮮やか
理屈では赤門の辺りは酸性土ということに

「衣替」(ころもがへ)が夏の季語
6月1日が衣替の日
夏服に替わってドキッとさせられるのが女学生の
白いセ−ラ−服姿
和装なら 裏地のある袷(あはせ)から裏地のない
単衣(ひとへ)に着替える日
昔の人と較べて現代人の年齢をどう意識するかは
人それぞれ 一般的には八掛けくらいだろうか
つまり 還暦の60歳は48歳くらい
私は七掛けが持論(年齢のデノミのようなもの
つまり 今の還暦の60歳は昔の42歳くらい
喜寿の77歳なら54歳くらい
米寿の88歳なら62歳くらい
科学的な根拠はなく ようは気の持ちよう
50歳を超えたくらいの方は一度お試しを・・・
女学生のセ−ラ−服より ご自分の若さを実感する衣替に

「走り梅雨」(はしりづゆ)が夏の季語
暦の上では六月十一日ごろの入梅から三十日くらいの期間が梅雨
「走り梅雨」は五月ごろ 梅雨入りする前の 梅雨を思わせるぐずついた
気候のことをいう
電車に乗るときは 子どものように先頭車輌の一番前の席に座る
鉄橋を渡るときは遠近法の鉄橋の一部になったようでワクワクもの
梅雨の頃なら乗客の誰よりも真っ先に雨に突入する
そうすると梅雨もまた楽し
大阪のJR環状線(一周21.7km・19駅・所要時間41分)
不完全な東京の山手線より完全な環状
日本一 あるいは世界最大級(?)の大阪名物環状線
大阪というワンダ−ランドを一周一望できるのでお奨め
梅雨の頃の雑然とした大阪を環状線の先頭車輌からお楽しみを

「梅雨入り」(ついり)が夏の季語  入梅(にふばい)
六月十一日が雑節の入梅 梅の実が熟す頃で梅がつく
「梅雨入り」と書いて(つゆいり)ではなく(ついり)と読む
ところがいかにも俳句的
<負の時期>人によってとらえ方はいろいろ
人生の負の時期
負の時代との遭遇(ちょうど今の時代のような)
しかし その負も 物は考えよう とらえようで負ではなくなる
私は十年前に脳梗塞に倒れ 俳句に出会った
まだ三年目 せめて十年物にならないと味とコクがでない
好きだったバランタインも十七年物になると申し分なし

「梅雨晴」(つゆばれ)が夏の季語 梅雨晴間(つゆのはれま)
梅雨のうち 半日や一日 あるいは一 二時間晴れること
華甲(くわかふ)「華」の字を分解すれば 六つの十と一とになる
「甲」は甲子(きのえね)の意 数え年六十一歳の称 
還暦の別称 ほんけがえり (広辞苑の説明による)
還暦を機に浮上して 連絡が徹底できなかった 中学時代の
同窓会ができた それこそ半世紀振りの邂逅
しばし 梅雨の晴れ間

「薔薇」が夏の季語
大阪・中之島公園の薔薇苑はそろそろ撤花の時期に
バラの品種改良やバラにまつわる文化は欧米が歴史的にも古く
その花の表情にも民族性やお国柄が表れている
アングロサクソン民族系 ゲルマン民族系そしてラテン民族系
ラテン系は表情が柔らかくキュ−トでセクシ−
近頃 カメラ付携帯電話の人が異常に増えた
いじましくもあるが これも現代の一風景
(218句目)


井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

第60回
茶柱ツイッタ−句会

第59回
茶柱ツイッタ−句会

第58回
茶柱ツイッタ−句会

バックナンバーINDEX
前を見る 次を見る
| 著作権について | このページのトップへ | 茶柱横町入口へ |