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井上あきら習作篇 その二十三 当季雑詠


「石蕗」
○△□こゝろころころ竜の玉


双方に痺る警策息白し


山裾は利休鼠に時雨けり


枯野より卑弥呼の宮の原寸図


がうがうと人工雪となりにけり


てんてんと石蕗の日だまりありにけり


枝離る刹那の枯葉ふと嗤ふ




<字句補足説明>
「竜の玉」(りうのたま)が冬の季語
竜の髯の実 蛇の髯(じゃのひげ)の実
ユリ科の常緑多年草 庭や垣根の下草に植えられることが多い
蛇の髯の実 濃い青色の7ミリほどの球形 硬くてよく弾む 弾み玉
○△□は<まるさんかくしかく>あるいは<まるしかく>と
五音に縮めて読んでもよい
上五だけは必ずしも五音でなくてもよい という暗黙の了解ごとがある
(深い理由は知りませんが)ので上五に置きました
この○△□は江戸時代の禅僧仙p(1750〜1837)の画に
インスピレ−ションを受けたというタオイストで詩人 画家の
加島祥造(1923〜)さんの受け売り(ダーナ2009年11月 冬号)
句としては ○△□と竜の玉との取り合わせの句
理屈としては 心は本来 弾み玉ともいわれる
竜の玉のようにしなやかなものであったはず
いろいろあって△になり□になり 果ては□の中に「古」まで入って固まる
そこで<もう一度弾み玉のような心を取り戻しましょうよ>という句にしたもの

「息白し」が冬の季語
警策(きゃうざく)は馬を警(いまし)め
走らせるためにあてる策(むち)の意
坐禅のとき 惰気(だき)眠気をさまさせるため打つのに用いる
長さ4尺あまりの扁平な棒状の板
打たれる人はもちろん打つ人も痺れるのだ
句としては 打たれる人も打つ人も共に合掌をする 白い息が重なる瞬間の景

「時雨」(しぐれ)が冬の季語
冬の初めから中ごろにかけ さっと降ってさっと上がり
時にはしばらく断続的に降り続く雨
山から山へ夕立のように移動しながら降ったり 止んだりする趣が深い
ことに京都の時雨は その趣の深さが愛でられる
この景の場所は大山崎 山裾の竹林の緑と時雨の色が重なって利休鼠色になる
利休鼠(りきうねずみ)は利休色のねずみ色を帯びたもの
利休色は緑色を帯びた灰色
時雨といえば山頭火に<うしろすがたのしぐれてゆくか>がある
応答句<しぐれてゆけばなほしぐる>としてみた

「枯野」(かれの)が冬の季語
その九「風光る」という春の季語のころに
纏向遺跡(まきむくいせき)から発見された宮址
<風光る卑弥呼の宮であれかしと>と期待をこめて詠んだ
発掘はさらに継続され
2009年11月にほぼ確実に卑弥呼の宮と思われる宮址と確認された
今は枯野のなかに 宮址の原寸大の平面図が現れている
うわ物は 当時の慣例で他に再利用され すでに物はないので
太い柱の穴がくっきり穿たれた平面図として解読されてゆく
東西南北の方位を明確に意識し 軸線上に並ぶ複数の建物
3世紀前半から中頃の王宮に相当する大型建物跡
魏志倭人伝に記された「宮室(宮殿)」の確認間近

「雪」(ゆき)が冬の季語
関西には六甲山に人工スキ−場(標高850m)がある
今年は 立冬の7日からゲレンデ(全長200m)造りが始まった
オ−プンは12月1日
数台の造雪機が轟音とともに 氷の粒を粉雪のように噴出す
いわば3600トンもの巨大な「かき氷」が人工雪のゲレンデ
本物の雪なら音など立てず しんしんと降り積もるのだが

「石蕗」(つは)が冬の季語
石蕗(つはぶき)石蕗の花(つはのはな)
キク科の常緑多年草 
葉は蕗に似て厚く 光沢がある 地面にはりついて叢(むら)がる
花は10月から12月 ちょうど今ごろ 花軸を20尺ほど伸ばして頭につける
キク科だから黄色い菊にそっくりの花
花の絶えたこの時期 それが点々と日だまりのように見える

「枯葉」(かれは)が冬の季語
ここで用いられた「嗤ふ」は普通に「笑う」のではなく
少々下品に「あざわらう」というニュアンス 
漢字にすると難しく「嗤笑」(ししゃう)
最後まで枝にあった枯葉が枝を離れる瞬間 そう見えたという句

井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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