井上あきら句作篇 その五 当季雑詠
立春や心の鱗まず捨てゝ
ふいが香にたちつくしたり春の宵
点滴の林の先や冴返る
菜の花に浮き立つことの二つ三つ
菜の花忌書林の崖を訪はん
<字句補足説明>
「立春」は陰暦の正月節 節分の翌日で新年の起点「立春」が春の季語
「心の鱗」は「目のウロコ」心を春にすれば春はすでに至る所に
春先の香といえば梅
見えない暗闇に馥郁とした香が「春の宵」が春の季語
病室に入ると点滴の装置が林のように並んでいて
その先の窓は春なのに
「冴返る」が春の季語
「冴」だけでは寒い冬の季語
「冴返る」は寒さがぶり返し 心持が引きしまる様子
病室の緊張感を表現
「菜の花」アブラナ科の越年草の油菜の花で春を代表する季語
「菜の花忌」日本を代表する作家 司馬遼太郎の忌日
作品に因んで「菜の花忌」と呼ばれる
出身地の東大阪に建築家 安藤忠雄設計による記念館があり
壁面一杯の書棚が印象的
「菜の花忌」を春の季語とする
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