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第9回 枕詞 歌枕〜万葉集へ

枕詞 歌枕をとば口にして万葉の歌の世界をしばし
うろついてみませんか

茶柱句会の一般教養講座のようなもの
触れておくと後々に効果あり

万葉集は7世紀後半から8世紀前半に編まれた日本最古の歌集
全20巻 4500余首からなります

その構成は三部構成

●雑歌(ぞうか)
 くさぐさの歌の意 相聞歌 挽歌以外
●相聞歌(そうもんか)
 消息を通じて問い交わすごとく主に男女の恋を詠み合う歌
●挽歌(ばんか)
 棺を引く時の歌 死者を悼み 哀傷する歌

巻14だけは東歌(あずまうた)の名を持っている
歌枕の地名 その他の歌が入っている

枕詞とは
万葉集に多用された歌の技法
一般的に五音節で五七五の上五(初句)におかれることが多い
和歌だけでなく「風土記」にも用いらる

折口信夫は「諺」を由来にもち
「祝詞」などと同じル−ツをもつ呪力をもったことばとしている

記紀歌謡などにみえる古い枕詞が
土地や人名に懸かる場合が多い
これらを讃美する表現

枕詞事例      /懸かる言葉
茜さす(あかねさす) /日 昼 紫 照る 君
秋津島(あきつしま) /大和
朝露の(あさつゆの) /消(け) 消え おく 命
足引きの(あしびきの)/山 峰 尾の上
  梓弓(あづさゆみ)  /引く 張る(春) 射る 音 末
天離る(あまざかる) /日 鄙(ひな) 向かふ
天の原(あまのはら) /ふりさけ見る 富士
新玉の(あらたまの) /年 月 日
青丹よし(あをによし)/奈良 国内(くぬち)
鯨魚取り(いさなとり)/海 浜 灘
石の上(いそのかみ) /布留(ふる) 古 降る
岩走る(いわはしる) /垂水(たるみ) 滝
空蝉の(うつせみの) /命 世 人 身
烏羽玉の(ぬばたまの)/黒 闇 夜 夢
味酒の(うまざけの) /三輪
大船の(おおふねの) /頼み たゆたふ
神風の(かむかぜの) /伊勢
唐衣(からころも)  /着る 裁つ 袖 裾
草枕(くさまくら)  /旅 ゆふ 仮 露 結ぶ
紅の(くれなゐの)  /色 うつし心 浅
三枝の(さへぐさの) /中
細波の(さざなみの) /近江 大津 志賀 なみ 寄る
敷島の(しきしまの) /大和(やまと) 日本 世
白妙の(しろたへの) /衣(ころも) 袖 袂 雪 雲
高砂の(たかさごの) /待つ 尾の上(をのへ)
玉櫛笥(たまくしげ) /ふた 箱 み あく
  玉の緒の(たまのをの)/長し 短し 絶ゆ 乱る
垂乳根の(たらちねの)/母 親
千早降る(ちはやぶる)/神 氏(うじ) 宇治
露霜の(つゆしもの) /消(け) 置く 秋
飛ぶ鳥の(とぶとりの)/明日香
夏草の(なつくさの) /しげき 深く かりそめ
鵺鳥の(ぬえどりの) /しのびよる うらなげ 片恋
射干玉の(ぬばたまの)/黒 髪 夜 夕べ 月
柞葉の(ははそはの) /母
春霞(はるがすみ)  /春日(かすが) 立つ おば
久方の(ひさかたの) /天(あめ あま) 雨 月 光
冬篭り(ふゆごもり) /春
水鳥の(みづどりの) /浮き 立つ 青葉 鴨
百伝ふ(ももづたふ) /八十(やそ) 五十(い)
八雲立つ(やくもたつ)/出雲
山川の(やまかわの) /あさ あと たぎつ
夕月夜(ゆふづくよ) /暁闇(あかつきとやみ)
若草の(わかくさの) /夫(つま) 妻 新(にひ)

歌の事例
あかねさす 紫野行き 標野行き
野守は見づや 君が袖降る
(額田女王 巻1-20)

あしびきの 山鳥の尾の しだれ尾の
ながなし夜を ひとりかも寝む
(山部赤人 巻11-2802)

あずさゆみ 引かばまにまに 寄らめども
後の心を 知りかひぬかも
(石川郎女 いしかわのいらつめ)

あまのはら ふりさけみれば かすがなる
みかさの山に 出し月かも
(安倍仲麻呂) 

歌枕
和歌に引用される地名のこと

大和朝廷以来親しまれてきた 大和 山城のほか
みなに崇敬される神仏にゆかりの場所
歴史的な事件になった場所
語呂合わせにより連想を誘う場所などがある

また 本歌取りがおこなわれるようになると
古事記に詠まれた地名も歌枕として使われた

実際の風景を元に作られたというより
歌や物語として繰り返し登場する中で
実際の風景から外れたところにイメ−ジが形成されてきた
いわば空想の産物ともいえる

歌枕の事例
北海道
蝦夷
東山道
近江
美濃
飛騨
信濃
上野
下野
出羽
陸奥
北陸道
伊勢
志摩
尾張
三河
甲斐
相模
下総
常陸
畿内
摂津
山城
大和
河内
和泉

万葉集についてもう少し詳しく学ぼうとする方には
万葉集(京都大学電子図書館)をお奨めします
アドレスは
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/np/manyo.html


「お知らせ」
今年6月1日から「平成万葉集」短歌作品募集が始まります
(平成20年11月30日締め切り)

これまで学んだことをベ−スにして、腕試し?
錚錚たる選考委員が魅力

岡井 隆  歌人 歌誌「未来」発行人
      歌会始選者 日経新聞歌壇選者

小池 光  歌人 歌誌「短歌人」編集人
      読売歌壇選者

俵 万智  歌人 短歌結社「心の花」所属
      読売歌壇選者

永田和宏  歌人 短歌結社「塔」主宰
      朝日歌壇選者

リ−ビ英男 小説家
      万葉集の翻訳で全米図書賞

壇 ふみ  女優 エッセイスト
      NHK「日めくり万葉集」朗読担当

中西 進  奈良県立万葉文化館館長
      「万葉集の比較文学的研究」で日本学士院賞

「万葉集」の最終歌が大伴家持によって詠まれて来年で1250年
読売新聞社と「万葉のこころを未来へ」推進
委員会の主催
入選作品(千首)を本にまとめる
詳しくは下記のアドレスを参照
http://www.yomiuri.co.jp/man-yo/


<出展>
本稿における参考事例・内容解説などについては、特段の説明がない限り、
その多くをフリ−百科辞典「ウィキペディア(wikipedia)」によっています。
ここにその出展を明記させていただきます。

井上 明関連サイトリンク
暮らし方研究会
http://www.kurashikata.gr.jp

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