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07 捨てられない手紙

押入れの中、古い箱の中にあなたから送られた手紙があります。
何年も開けた事のない箱の中にきっとあなたからの手紙があります。
どんな話が書かれているのか覚えていません。
いつもらったかも覚えていません。
万年筆で書かれたものなのか、
ボールベーンで書かれたものなのかも覚えていません。
字はどんな感じだったかしら。
達筆ではなかった気はします。
紙はどんなものだったかしら。
真っ白だったような気もするし、かわいい絵が描いてあった気もするし...
すべての記憶が色あせた紙のように目の前を現れてはまた消えていきます。


何年か前に偶然あなたに会いましたね。
昔はお互いによく手紙を送っていたねという話に
あなたは苦い笑いを浮かべながら
私が送った手紙は全部捨てたと言いました。
捨てたと言いました?燃やしたと言いました?
なんだか私の頭の中にはあなたへの記憶を消す装置があるみたいです。
たった数年前に聞いた話なのに
私、はっきり覚えていないんです。

ただ、ただ、
あなたのその苦い笑いに
一緒に笑った記憶だけが残っています。

何年も開けたことのない
古い箱の中のあなたからの手紙も
消えてしまった記憶のように
ある日突然消えてくれればいいのに...


捨てることも
読み返すことも出来ない思い出は
古い箱の中に
きっと
います...

22
335日ぶりの手紙

21
午前1時43分

20
今の気分?

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