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05 危険な時間
真夜中の一時
まだ眠気は訪れなく、部屋の中には静かな空気が流れる。
窓の外にくっ付いていた車の音も遠くに去りつつ、消えつつ...
隠れていた音楽が静かに音色を立てる。
ベットを離れ机の前に座ると危険な時間が始まる。
何でだ、何でだ、
この時間になると手紙が書きたくなるのは。
何でだ、何でだ、
この時間になると恋しい人の顔が浮かび上がるのは。
何でだ、何でだ、
この時間になるとコーヒーも、CDから流れる音楽も美味しくなるのは。
何でだ、何でだ、
この時間になるとペンが狂ったかのように滑り始めるのは。
数え切れない真夜中を手紙と向き合ったのでわかる。
この時間に書いた手紙の中でポストの中に入れたものは10本の指より少ない。
その10本の指より少ない手紙もポストに入れた途端、
取り出したかったものが殆どだ。
時計は12時をとっくに過ぎ、一時に向かい始めている。
机がぎらぎらと光始める。
引き出しがギシギシ音を立て、中の便箋がガラガラと騒ぎ始めている。
CDはセンチメンタルな曲を準備し、にやっと笑っている。
なぜコーヒーマシンのお前まで香りを漂わせるのか。
おいおい、みんな、寝ようよ。
いや、お願いだから寝かせてくれ。
ああ、ベットのお前まで私を引き離すのか。
時計のスピードと心臓のスピードが重なり合う。
ああ、もう逃げられない時間だ。
お待ちしておりました。
ようこそ、危険な時間へ。 |
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