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第一話 旅、前夜。

カバンの中の宇宙
はじめまして。
こんにちは。絵描きのデナリです。
よく旅に出ます。
目的地は海外でも、国内でも、近所の友達の家でも、どこだっていい。
いつもとは違う天井を見つめながら眠るのが好きです。
私にとっての旅とは「いつもどおり」から一歩抜け出て、「属さないゾーン」にいくということ。「いつもどおり」を生きている時、私は常に何かに属していて、私の色と私の背景色はきちっと調和している。そこには自動的に自分を運んで行ってくれる一定の流れのようなものがあります。
反対に、属していない場所は居心地が悪く、落ち着かない。そこでは私はただの「しみ」、背景色と合っていない一点の異物なのです。
けれどその分感覚は研ぎ澄まされ、アンテナはりめぐらされ、全てを吸収しようと全身スポンジになる。これまで何も考えずに身を任せて流れていたのが突然ぽっかりと浮島に打ち上げられて、目の前をどうどうと流れる川をみつめているような感覚になります。
嫌でも自分自身っていうやつと向き合わなければいけなくなり、普段は片隅におしやっている面倒な材料をひとつひとつ、思考のまな板の上に並べて料理しなくてはいけなくなるのです。試行錯誤しながら料理をしてみると、意外と良い味になったりならなかったり。
そんな風に過ごしながら、異物だった私が少しずつその土地に染み込み始めた頃にはもう帰る日がやってくる。帰ってくると全ては「いつもどおり」だけれど、その中に立っている私はほんの少し違う私になっている。
だから、私は旅に出るのが好きなのだと思います。
これまでいろいろな場所を訪れて、出会いと別れに泣いたり笑ったり。
ある場所は通り過ぎただけ、ある場所には長いこと暮らしてみた。
地層のような体験が今の自分を創っていて、そのうちのどれかひとつが欠けてもきっと今ここにいる私はいない。
そして旅に出るといつでもスケッチブックがらくがきでいっぱいになる。
もちろん何百万画素のデジタルカメラを持ってゆけば目の前の風景をこれ以上ないくらいに正確に残せるけれど、自分の目と頭と心を通して濾過したものが、私にとってのその旅の記憶なのだと思うから。
次はどこにいこうかな。
ふらり、ふらりと気の赴くままに。
いつものスーツケースを引っ張り出して。
旅に出ようと思ったその瞬間が、旅のはじまり。
そんなデナリの
一期一会に満ちた旅のあれこれを
一語一絵で少しずつ、綴っていければと思います。
よろしくおねがいします。 |
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