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<1>夢がかなう魔法の島


「地上最後の楽園」という宣伝コピーが、本当は深い意味を持つバリ島。知れば知るほど、底なしに吸い込まれていく奥深さの正体はいったい何なのだろう。その人には、その人のバリがある。訪れる人の、夢や欲望をそのまま受け入れてくれる、実現してくれる。夢がかなう魔法の島。それがバリ島の正体なのかも知れない。

『480坪の庭。サヌールの大邸宅の一角に約45坪 20年間契約160万円。』
 行ったこともないバリ島の「お得な土地」の話に目がとまった。当時、家族の一大プロジェクト「子供の中学受験」を控え、1年間の海外旅行自粛を自らに課していた最中、せめて、きれいな海がある南の島のHPでも見て1年後の解禁に備えていた。そんなとき目にした信じられない価格の物件情報。バリ島ってこんな金額で土地が手にはいるのか!
 160万円で45坪まるまる家が建てられる。大家さんの敷地内なのでガードマンを雇う必要もないし、ドーベルマンを飼う必要もない。地域へのかかわりもやってくれる。しかも建築費は200万あればなんとかなるらしい。

旅行計画のためのネットサーフィンは、バリ島で別荘建設のための情報収集に進化していった。ノタリスという行政書士による権利書作成から始まり、ハイセンスなバリ建築の美を探り、チープな建材でいかにセンスよく見せるか研究、建築費は日本の数十分の一、装飾のほとんどがオーダーメイドというスタイルが、さらに空想へと膨らませていく。
 引き金となった「お得な土地」は成約済みとなり逃してしまったが、バリ島に別荘を建てるという感触だけが、リアルに残ってしまった。

見知らぬ土地に、夢と妄想が一人歩きしていく。サヌール在住者のHPやブログをチエックしながら生活シミュレーションを繰り返す。ローカル交通はベモ。両替で信用できるのは、3店舗。スーパーならハルディス。屋台もまた楽しい。1ヶ月の生活費が5万円かからない試算。いまの生活を放り投げてもなんとかやっていけるのでは? と期待はさらに広がる。
 その間日本では連日、「年金の支給額ダウン」のニュースを流していたことが決定打となり、最悪の事態として「老後の経済逃避地」としてのバリ島も視野に入れつつ、夢と期待の妄想はさらに広がっていった。

そして、初めてのバリ島上陸。
 ツーリスト半分、物件下見半分。不思議な感覚で街を歩く。これまでの短期旅行だと、自分対訪問先という向き合う姿勢があって、コミュニケーションを図るという図式だったが、サヌールでは、街と自分が同じ方向を向いて、その中で起こる出来事を日常のように受け入れていく姿勢で物事をとらえていく。初めての街なのに、電話を入れる相手がいる。迎えのバリ人のジープに乗り込み、ローカルエリアの迷路に吸い込まれていく。


最初は「安いから」という理由でのめり込んでいったが、結局その土地と肌が合うかどうか。感覚的にいやだったらあきらめようと。日本で「妄想バリ」を繰り返すうちに、ひとつの結論に達していた。発展途上国特有のトラブルと遭遇しても、根っから不快感を感じなければ、いけるんじゃないかと。
 そしてなにより問題なのは食事と体調。おいしいものが手軽に食べられない国には住めない。いつもおなかを壊すような国には住みたくない。「バリ腹」は通過儀礼というが、できることなら避けたい。踏み絵として屋台料理を3日連続して食べてカラダがどう反応するか様子を見た。
 行く前からあれこれ一人で盛り上がり、勝手にルールを作り、それでも楽しみにして行ったバリ島サヌール。想像したことと、想像できなかったことが折り重なりながら、ガムランのようにエキゾチックな和音で魂に響いてきた。根っこの部分で「なじめる」と確信した。

滞在3日にして出会ったバリ人4人。日本人ロングステイヤー2人。4日目には、遠い親戚の家のような、ほっとする感覚に包まれていた。相手の好意に半分遠慮、半分好奇心。

ふと考える。
 普通に旅行して同じ土地に4泊してもそれなりに愛着は湧いてくるが、なにかが違う。そこで出会った人の数とその濃さというか。
 土地を下見して、そのお隣さんやご近所さんと話をすると、「オレんちにも寄ってけ!」と誘われ、昼から宴会。また別の日にはたまたま通りかかった候補地の近くの家の息子さんが誕生日ということで、半ば拉致されるかのように誕生会会場まで案内され、「バビグリン」や「ナシゴレン」ほか、たくさんの食事を振る舞われる。お盆に田舎へ帰省して親戚の家で法事のあとの食事会をするような気分。その土地を買ったわけでもなく、ただ見にいっただけでご近所さんまでもが歓迎ムード。歓迎されたことが単純にうれしかったが、それ以上に、なつかしさや忘れてしまった遠い記憶のようなものがよみがえってくる不思議な体験だった。日本で無くしたものをバリ島で見つけたような、心のふれあい。魂の振動。
 ホスピタリティあふれるバリの田舎、風にたなびく棚田の稲穂。棚田を囲むように立ち並ぶ椰子の木のすれあう音。うまくいえない気持ちが次第にはっきり輪郭としてみえてくる。そう「バリ島は永遠の夏休み」を体験できる島。

一年中が夏休み。田舎へ帰省して縁側でスイカを食べる夏休み、高級リゾートで過ごす優雅な夏休み。望んだスタイルが手に入る、手に入れられるのがバリ島の魅力だということに次第に気づき始めた。

旅の目的の残り半分、「ツーリストとしのバリ」は、土地探しとはまた別の楽しみが待っていた。 「 高級スパでお姫様気分」や「雑貨天国」「オーダー天国」としてのリゾートバリ島。ハワイに滞在するより安い費用で「買う」「観る」「食べる」「癒される」が堪能できる。南部リゾートエリア、クタ、レギャン、スミニャックでエキゾチックなアジアを感じ、ジンバランでシーフードを堪能し、ヌサ・ドゥアの高級ホテルでリゾートを満喫する1週間。  出かけたいときに出かけて、面倒なときは1日中、ホテルで過ごす。プールあり、ビーチあり、アトラクションあり。外資系リゾートホテルに宿泊している限り、時間をもてあますことなどない。自分で何かをしようと思わなくても、向こうから、「ラクダライドあります」「天体観測スクールやります」と、つぎつぎに誘ってくれるし、ホテル併設のスパでマッサージすれば、最初の「うっとり感」が次第に「しっとり感」にかわり、つるつるお肌と、ピチピチボディーを取り戻していく。あまりの気持ちよさにうたた寝してしまうと、目が覚めるころには、身も心も若返ったじぶんが、そこにいる。
 ブランド品こそ数少ないが、エステ、雑貨、リゾートファッションなら、そこそこいいものが安く買えるし、イタリアンや無国籍料理、そして、外国人仕様の日本料理が日本の学生食堂価格で並んでいる。お金を使うことが、これほど楽しいと思ったことがないくらいに、円の力に感謝できる国。

それぞれに、それぞれのバリがある。女の子の夢、男達の願望、団塊のあこがれ、シニアのやすらぎ。尽きることのない欲望を大きな愛で包み込み、満たしてくれるバリの神々。「偉大なる夏休み」は夏休みである限り、訪れる人を優しく受け入れ、癒し、また日本へと帰国させてくれる。
 お手軽なプチ贅沢を堪能し、たっぷり贅沢気分を味わい、旅の最終日まで飽きさせず、夕陽を観ながらロブスターにかぶりついたり、心のひだまでもみほぐしてくれる。
 地上最後の楽園は、今日も私に、ほほえんでくれる。

<6>
1日4000円以下!
激安車チャーター車の実情。

<5>
バリ島のキャッチセールスに
キャッチされてみました。

<4>
日本人を知り尽くした、
日本語ツアーの醍醐味。

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