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「未熟とは「未(いま)だ熟さぬものの、やがて確かに熟するもの」のことをいう。いつまでも熟することのないものは「不熟」といい、結局は、熟することなくいのち果てるもののことだ。つまり「未熟」と「不熟」は対極(正反対)に位置するものである。というわけで「未熟なる若い衆」とは「有望な可能性に充ちた若者」の意味である。

第12回 年末と年始

 まずは、ご存じの虚子の句を。
 〔去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの〕
 1年の区切りとしての大晦日や一夜明けての元旦があるのは致し方ないとしても、年末年始になにやら人々がこぞってオロオロとアタフタと、そして、なぜかウキウキとワサワサと集団移動する風景が嫌いです。
 もともと、生まれつき、好きだの嫌いだのというわがままっぽいことを口にしないタチです。
 生きてきた時代も、個人的な経済的環境もそんなゴタクを許してはくれない状況だったし、与えられたことをなるべく黙って受け入れることにさしたる支障もなかったのです。
(でも実は、とことんのところでは、物の考え方とか、もうひとつ主義主張の異なる者に対しての好き嫌いは頑固頑迷なのですが、ふだんはそれを明らさまにはしないという、まことにいやらしい人間なのです)

 でも、生業としてのラジオやテレビの作家業とか、コマーシャルの企画制作の仕事とかのチームを組んでの作業は、それこそ好き嫌いなど一切口にせずに大量に、つつがなくこなしてきました。
 このン十年は、もっぱら時代小説の作家としての、気の合う編集者や出版ご担当者との、ごく少人数の方との作業ですから、これはもう精神的には快適そのものです。
 だいたい、昔からずっと麻雀とかゴルフとか嫌いだったのも、正体の知れない(初対面だったりする)者たちと長時間一緒に過ごすことがイヤだったからなんですねぇ。
 そんな無用の気遣いをしていると、健康によくないと……そう勝手に思い込んでいるわけです。

 さてここで話題は変わりますが――。
 この12月15日は、新宿紀伊國屋ホールでの催事で「祝・卒寿、<生きもの/金子兜太の世界>」DVD上映とトークショー(金子兜太・小沢昭一・永六輔)に、いそいそ出かけました。

 90歳におなりになった俳人・金子兜太先生のお健やかさにはビックリでした。
 10年前に、埼玉県桶川公民館の「種田山頭火」についての講演会で兜太先生との記念写真を撮らせて頂いたのですが、ちっともお変わりにならない。というより、さらに生気横溢……といったふんいきで、話し巧者の小沢昭一、永六輔さんとのやりとりもとびっきり楽しいものでした。
 俳人というと、例外なく(?)、取り澄ましていてひたすら小煩いという印象があり、(かく申す小生も、我流五七五をヒネるのですが、俳句結社には無縁です。)でも、そろそろ五十年のお付き合いになる変哲(小沢さん)宗匠や、六丁目(永さん)宗匠のモノされた句はそれこそ謙虚に玩味させて頂いておりまする。
 当日、壇上に登場なさった黒田杏子さんも、小生がコピーライター時代、広告代理店博報堂に在籍なさっていたので、ぜひお目通りをと熱望していたにもかかわらず歳月が過ぎてしまい、紀伊國屋ホールの会場で、勇を鼓してごあいさつをさせて頂きました。  永六輔さんにごあいさつをして、小沢昭一さんにも……と思っていたところ、早々にお帰りになられて果たさずじまいでした。
 でも、翌日の夜(九時半過ぎに)、小沢さんご自身からのお電話で「お目にかかれず……失礼しました」というごていねいなお言葉をもらい、大カンゲキしました。
 兜太先生には、遅ればせながら(なんと十年も!)お渡しそこなっていた桶川公民館でのスナップ写真を……と思ったのですが、先生のDVDやご著書のサイン攻めでテンテコ舞いをなさっていて、ご遠慮しました。
 兜太先生には、あらためてファンレターをお出ししました。
 当夜、壇上に並んでおられる4人の方たちに――小生は年甲斐もなく胸をドキドキさせた師走の一夕でありました。

 つまり――
 人づきあいの嫌いな私めではありますが、実のところ、当方が勝手にアコガレル方々は、他にも何人かいらっしゃいます。
 あえて、のべつ嫌いなどとは口にしませんが、どうやら、好きという思いは年々、精選されてシャープになっていくようです。
 これって、偏屈とか頑固になっているという証しでしょうかね。
 いえいえ、これも人生の「生業仕分け作業」でアリマス。
 「茶柱横丁」の皆さん、新しい年もどうぞご機嫌よくお過ごし下さい。

●著作&出版近況
 2009年12月 「しぐれ月――奈落の銀次始末帖」(学研M文庫)
 2010年2月 (予定)「新宿いま・むかし――内藤新宿から新宿コマ
        劇場クローズまでの230年余の急ぎ旅」<仮題>
       (東京新聞出版部)
 2010年2月 (予定)「華屋与兵衛人情鮨/その二 川千鳥夕千鳥」
       (廣済堂文庫)
 2010年4月 (予定)「風の迷い道――からくり新八控帖」
       (廣済堂文庫)

PS ひょっとしておひまがあったら小生の
HP→http://www.mochi-well.com/ 「社会&芸能つれづれ愚差」
のぞいて下さい。

「週変わりエッセイ・ニッポンの芸能人」
http://www.mochi-well.com

どうぞごらんのほどを。

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「それにしても……」
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