「未熟とは「未(いま)だ熟さぬものの、やがて確かに熟するもの」のことをいう。いつまでも熟することのないものは「不熟」といい、結局は、熟することなくいのち果てるもののことだ。つまり「未熟」と「不熟」は対極(正反対)に位置するものである。というわけで「未熟なる若い衆」とは「有望な可能性に充ちた若者」の意味である。
第8回 フェイク人間ばっかり!
盗作・贋作・偽作
この世の中にはホンモノとニセモノがある。
若者諸君の恋人さがしと結婚という〔人生の大事業〕もこのニセモノ・ホンモノを識別するということが大テーマになる。
それにしてもこの社会、ウソつきの多いこと!
いまぼくは、時代小説と平行して、舞台の脚本を書くつもりでいる。
この5月末から6月にかけて、劇団ピープルシアターが、両国シアターXで上演した時代劇「乳房一揆」は原作提供だったが、秋11月には劇団テアトルエコ−公演にオリジナル脚本「大都映画物語――遺骨(ほね)まで愛して」を提供する。
次作の企画は10種ほどの腹案があるが、そのひとつに詐偽及び詐欺師たちを主に据えたコメディに特に意欲的である。
この種のハナシは何度も戯曲や小説になっているが、時代が変われば〔インチキの様相〕もガラリと変わるのであるから、何度くり返しても古びることはない。
現代はインチキ・オンパレード
偽装・粉飾・虚偽といえば、例のマンション・ホテル問題、そしてライブドア問題。さらに社保庁のあざとい裏工作、それに……とキリがないが。
新しいところでは、イタリアの画家の絵をそっくり模写したような作品であれこれ賞をうけていたことがバレた和田某という男がいた。
あくまでもオリジナルだと強弁しているが、その図々しさはただコッケイだ。
そういえばジミ−大西という人の作品のニセモノもはびこっているという。
そうそう、考古学の学者センセイが、あらかじめ〔珍しい石〕を自分で埋めておいてその〔発見〕を喧伝するスキャンダルなど、そんな例はうんざりするほどある。
勝手な欲望のためにウソやニセモノをデッチあげるケースは、現在の「振り込め詐偽」や「投資出資詐偽」などの大流行で先刻思い知らされている。
経済小説などで時代を活写した作家、梶山季之の作品でニセモノ絵画作りの話があった。
名作をそっくり模写したカンバスを古っぽくそれらしく偽装する手段として、農家の汲み取り式の便所の床下の壁に貼り付けておく――というのがあって大笑いして読んだ。
しかし、いま最高(?)のニセモノといえばやはり政治家とその権力構造に群がるヤカラたちである。
あれこれエラソーなことを口にしながら、結局は私利私欲を弄して、やがてバレると、さっさと逃げ出すというハレンチ漢が跳りょうする。
それにしても近ごろの若者諸君には、ニセモノ・ホンモノを鑑別する能力がひどく欠落しているのではないか。
ということは、思考回路にまっとうで旺盛な想像力と創造力が不足しているということだ。目の前1メートル四方ほどの表面を見ているだけで、そのものの本質を見極める努力をしない。その怠惰は政治や社会をダメにし、なおかつおのれの人生を台なしにすることになる。
「人間は偽装と虚偽と偽善にほかならない。自分自身においてもまた他人に対しても。パスカル」
でもね、ウソばっかりという人生はとてつもなく居心地が悪いぜ。それにねえ若者諸君、みじめと哀れと前科のレッテルなんて人生、冗談じゃないよ!と思わないかい?
というわけで、「詐偽とペテンの大百科」(青土社刊)というドーンと重く大きい本があり、いませっせと読んでいる。
たとえば「氷ミミズのカクテル――酒場のインチキ飲み物」なんて項目もあるのダ。
かと思うと、「伯爵(はくしゃく)」を名乗る男がいた。せっせと買春宿に通って娼婦を買うのが大好きなこの男は、コトが終わったあと、料金の他に多額のチップを娼婦のストッキングの股の部分にさし入れて得意になって帰っていくのが例になっていた。
が、しかし、気前のいいチップの見せ札はホンモノだが、ストッキングのお股にさし入れるモノは、本物の札とすり替えたチリ紙ばかりだった――なんてオモロイ詐偽ばなしもある。
やっぱり、面白くなければベンキョーじゃない。いや勉強を面白くするのは自分自身ですよ、若者諸君!
あっと気付いたら「フェイク人間」だったなんて、哀しいよねぇ。でしょ?
追伸
去る4月23日、千葉七区衆員議院補選の際、応援にかけつけたコイズミ首相は「ウソをいわぬ政治を」とがなった。対する小沢イチローは「自民では改革ムリ」とケナした。両者ともまったくウソ臭い。
6月2日の新聞では、あの問題の「共謀罪」の法案に対して強行に対決姿勢をうち出していた民主党案を与党がOKして、一転成立する見通しという。
つまり、自民・公明側は参院戦を意識して、民主党案を「丸呑み」したとのだと。
ここにも、偽態・詐術・欺瞞が横行している。
どいつもこいつもまったくウソ臭く、デタラメそのものである。批判勢力がゼロという現況は危機そのもの、なのですよ若者諸君!
「週変わりエッセイ・ニッポンの芸能人」
http://www.mochi-well.com
どうぞごらんのほどを。
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