脳の片隅に置き忘れた思考のかけら。日常、ふと感じた疑問や発見。そんな屑のような、公に発表するのも躊躇するようなモノを自由に出現させる庭、それが「ヌンディーム・アリーノ--自由の庭」です。ここに公開するモノは、イラストレーター山田博之とは超別世界であり、また、超本質でもあります。「自由の庭」ですから、絵も洗練せず稚拙なまま公開します。シリーズとして統一されたテーマも何もありません。他人の頭の中を覗くつもりで、楽しんでいただければ幸いです。
第三回 『太ったチワワ』
80年代、僕は大阪の天満橋(てんまばし)で
デザインプロダクションに勤めていた。
そのそばに「東海園」という中華料理店がある。
その店頭に、そいつはいた。
体長は30センチ程度。毛色は茶。
丸々と太った体。小さな頭。尖った鼻先。黒い大きな目。
いつ見ても小走り。
最初は大きなネズミかと思った。
誰彼なしにキャンキャン吠えるので、犬だと判った。
5歳のとき、僕は野犬に太腿を咬まれた経験がある。
それでも犬は大好きだ。(もちろん猫や鳥も)
犬を見ると触りたくなる。
しかし、この犬だけは、最後まで触れることができなかった。
近づこうとするだけで、吠えながら逃げる。
相当な人間不信。
この犬について判ったことと言えば、
信じられなかったが、種類がチワワであったこと。
東海園の飼い犬であったこと。
それだけ。
名前も知らない。
だから、当時も今も、そいつのことは「太ったチワワ」と呼んでいる。
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