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其の六十三 出雲、松江で不思議タクシーに乗った件

先日、仕事でお付き合いのある方々の
研修旅行に参加させていただいた。
出雲大社に詣で松江城を見学し、
翌日からは産地や加工業者のところを見学してまわる日程である。
到着当日の夜は、地元経営者の方々と老舗料亭で親睦会が催される。
末席に参加させていただく。
宴が終わり、皆様は二次会へ。

一足先に宿泊先へ戻ると言う方々とともに、
私も先に戻ることにした。
呼んでいただいたタクシーが到着し
皆で乗り込もうとしたのであるが、
むむむむ。
人数が増えて溢れてしまった。
急がずとも宿に戻るだけなので先を譲り、
次に到着したタクシーに今回の集まりの理事長さんとニ人で乗車。

そのニ台目タクシーの運転手。
会話するうちに矢鱈と東京に詳しいことが気になったものである。
「運転手さんは東京に詳しいのですか」と問うと
「月に一度、仕事で行くんですよ」と返答。
ほほぅ。運転して行くのかしら、と思ったらそうではなくて、
何やら月に1回だけ、
東京で別の仕事をしていると言う。
ふむふむ?!
なになに?
因みにどんな仕事であろうかと
興味深々で聞いてみるがなかなか教えてくれない。
「うむむ。そうですねぇ。エハラサントカ
ミワサントカご存知ですか?」
一瞬なんの事やらと思ったが。
「ああ、はいはい!もちろん知っております」
「そういうことでして…。
月に一回いろいろと東京で頼まれて(コワイものを)見たりするのですが…。
まあ、あぶない仕事ですわなぁ(笑)」

私は、こうした怪しげなというか、
不思議な話が大好物なのであるが、
まさか出雲大社に詣でて、
ご縁シナプスがあちこちに伸びたのであろうか、
ここでそんな方に出会うとは面白い。
「私らはどうですか。なにか見えませんか。
なにかが憑いてたりしませんか?」
と、少しだけ飲んでいる勢いで愉快になり、
隣に座る偉い方まで一緒くたにして尋ねてみる。
「憑いていませんよぉ。時々おられますがの、そういう方。
そういうときは私、一言も口をきかないんですわぁ。
そちらの方、非常に良いですね、そのままで。素晴らしい方ですね」
それはそうであろう。
好々爺に見えるが、今回のツアーの一番偉い人であって
人品正しい立派な社長さんである。
「私は私は?」
と前のめりに下品に質問を繰り出す。
早くしないと、もう宿についてしまうからである。
「真面目で一生懸命ですね。まあ、いいんでは。ただ…」
「ただ…? ただとは…なにっ?!」
「髪型なんとかせぇ…と、
…言っとりますわな」
「言っとります、って? 誰が?」
「…後ろの人がですわ」
「えええっ? 誰? 何? 何処?」
もちろん振り向いても、後続車のヘッドライトが雨の中に光るのみ。
「まあ、ご先祖様…ですかなぁ。
髪型ちゃんとすれば、なんか良い事あるよ、と言うてますわ」

「わはははは。
東京に帰ったら美容院を予約します。
いや、ホテルに戻ったらすぐ予約します。
ところで運転手さん名刺ありますか?」
差し出された名刺はタクシー会社の観光名所が入った名刺であった。
しかし、携帯番号が入っているので此処に電話をして
今度東京に来る日を尋ねればよいという事だなと了解する。

よっしゃ〜!
出雲大社すげ〜。
と更に下品に喜び、苦笑する理事長と共に下車。

後日談…
この話を彼方此方で話したのであるが…。
「私だって、藤原さんに髪型をなんとかしたら?
っていつも言ってるぢゃぁないですか」
「別にスピリチュアルやっていなくても、
言いたくなる髪型だったのでは?」
「タクシーの運転手さんもよっぽど気になったのであろうよ」
…そういうことなのか。

其の七十二
十分にご注意ください

其の七十一
一本木

其の七十
ダイヤと法灯

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