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其の三十七 子 供
ソファで横になったまま眠ってしまうことがある。
私も。家族も。
ソファで眠っていた夫の手が上に差し出され、
頻りに何かをつかもうと空を切っている。
寝惚け眼を擦りながら、夫が起き上がり、
「ここに今、赤ん坊の足が。あれ、変だなあ」
などと不思議がっていた。
やけに真実味を持った赤ん坊の足が宙にあったと言う。
ぷくぷくむくむくした赤ん坊の足を思い描いてみる。
空中を這い這いするのか、ぶらぶらするのか。
はたまた立っちでアンよ。
なのか。
しばらくして、
私がソファで眠りこけていると、二、三人の子供達が
玄関から入り込んで来たかと思うと口々に何やら騒ぎ立てて
そのままベランダへ抜けて行った。
なかなかに元気のよい男の子達であった。
鮮明に。
此の辺りは子供の通り道なのかもしれない。
兵隊や落ち武者の通り道よりはずっといいと思い
もう一度眠った。 |
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