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その12 秋 転換

 まだ体の芯に、暑さで強張った内蔵が緩みきらずに残っています。南の海から届く風はいつまでも熱っぽく、「これまでのような秋ではない」と警告しながら、吹いてくるようです。

 猛暑の中、夏野菜に追われる様に過ごしました。退職したパートナー氏が、春に川辺に畑を借り、精進した結果、春菊に始まり、インゲン、おくら、きゅうり、ししとう、ピーマン、なす、枝豆、トマト・・・と休む暇なく食べ続けてきました。  中でも圧巻は紫蘇です。虫除けに植えたのでそうそう食べるつもりは無かったのに、次第に濃くなっていく風味に刺激され、アディクション気味に嵌りました。一日4、50枚食べ、それでも飽き足らず、紫蘇ジュースを作って持ち歩きました。日の出前にぎしぎし自転車をこいで畑に出かけ、暑くなる前に戻ってかまゆで作業です。紫蘇からふつふつ湧き出る不思議パワーに、作る内からうっとりしました。摘んでも摘んでも再生し、今は穂となり実を孕んでそそり立つ姿は、不滅なりといった感です。

 一国の総理が、ある日突然辞意を表明するのもあり、の日本。海外暮らしを2年してこの6月に帰国した娘は、妙に納得したようでした。曰く、「辞めるのあり。よくみんな、イヤにならないなぁと思ってた。誰も彼も何だか凄い無理してて、それを感じないようにただ走ってる。暮らすって、こういうことじゃない」。

 「なんだかおかしい」と、からだも心も充分感じていても、その想いが胸を突いて出てきそうになると、ノドのあたりをグッと締めて飲み込んでいる様子。「みんなに調子合わせないと。KY(※)はダメだから」と自分をなだめている様子。以前「ふしぎちゃん」とか「天然」と他者を揶揄するときにも、そこはかと排斥の匂いがしていましたが、今はあからさまです。まるで仲間はずれは自己責任といった勢いです。

 アサーティブネストレーニングの「12の権利」の4つ目は、「私には、自分の意見と価値観を述べる権利がある」です。この権利のコメントとして「わがまま」「人の意見を聴くのが先」「自分の意見なんてない」「別に言いたくない」などと感想をもらいます。きっと今の日本、この権利の禁止令でも出でいるのでしょう。誰かの意見について行き、遅れないよう気を張っているのでしょう。どこへ走り込むのでしょう。崖っぷちじゃないかしら。

  色合いの淡さも含め、私は自分の価値観が好きです。「もっと主張的で華やかな人かと思った」と言われるのですが、地味でずっしりしています。身体を動かしてみると、奥のほうでゆっくり「イッチニ、イッチニ」と号令をかけている自分がいて、そのモタモタさが微笑ましくなります。「だめだなぁ」という代わりに「そうか、そのペースなのね、了解」と声をかけます。「KY」なんてどこ吹く風で歩いても、景色は美しい。紫蘇の魔法で魔女見習いになっていたい。

※KY→K =(その場の)空気を Y=読む の略で、人の集まりの中で、
その場の空気を読めない人に使う。最近の流行語の一種。

「12の権利」*********************************************************
<1>私には、日常的な役割から自立した一人の人間として、自分で物事の優先順位を決める権利がある
<2>私には、賢くて能力のある対等な人間として、敬意を持って扱われる権利がある
<3>私には、自分の感情を言葉で表す権利がある
<4>私には、自分の意見と価値観を延べる権利がある
<5>私には、「イエス」、「ノー」を自分自身で決めていう権利がある
<6>私には、間違う権利がある
<7>私には、考えを変える権利がある
<8>私には、「わかりません」という権利がある
<9>私には、欲しいものを欲しいと言い、したいことをしたいという権利がある
<10>私には、人の悩みの種を自分の責任にしなくてよい権利がある
<11>私には、周囲の人から認められることを当てにしないで、人と接する権利が=∴ある
<12>私には、アサーティブでない自分を選択する権利がある

「こころのちからメッセージ」**********************************************
<1>私は、私が何をするか、どれから始めるかを自分で選んで決めていい
<2>私は、自分の良いところや能力を、ちゃんと認めてもらっていい
<3>私は、自分に素直になって、人に感情を伝えていい
<4>私は、自分の意見や価値観を、正直に相手に伝えていい
<5>私は、他の人の気持ちにではなく、自分のきもちにそって、「はい」、「いいえ」を言っていい
<6>私は、まちがえてもいい
<7>私は、きもちや考えが変わったら、無理にがまんせずに、決めたことを変えていい
<8>私は、わからないことがあったら、教えてもらっていい
<9>私は、自分の一番の希望を、いつでも相手に伝えていい
<10>私は、人の悩みを、自分のことのように背負わなくていい
<11>私は、周りの評価を気にせずに、自分の考えややり方を伝えていい
<12>私は、私のままでいい

その19
虹の向こう 山の彼方 飛ぶ鳥

その18
降る花

その17
春が来た 春が来た

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