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その6 「女はこれからだ」

アンディクソンさんが来日し、ワークショップが開かれました。
彼女はヨーロッパでのアサーティブネストレーニング
(自己表現トレーニング)の第一人者です。
そして私が炬燵で仲間と取り組んだ"Women in your own right"の著者です。
直々のトレーニングを受けるチャンスは滅多にないので、私は一も二もなく申し込み、運良く「青山こどもの城」での研修に参加することが出来ました。
30名ほどの参加者とともに、ロールプレイと小講義を繰り返し受け、
濃密な二日間を体験しました。

私にとって、彼女に会うのは2度目のことです。
最初の出会いは、あまり幸せなものではなく、
時々思い出すと胸の痛む出来事でした。

それはもう10年以上前のことです。
私は森田汐生(現アサーティブジャパン代表)と2人で、ロンドン郊外の彼女の自宅を訪れました。
私たちはアポイントが取れたことだけでも興奮していたし、
いよいよ会えることになって、それだけでも感動していたのでした。
静かで広々とした居間で、挨拶は和やかに始まり、私たちが日本(の掘り炬燵!)で、どれほど熱心に集中して、彼女の本に取り組んできたか語りました。彼女も親しげに聞いていました。
その表情が一変したのは、「いずれ私たちのちからで、アサーティブネスを紹介するような冊子や本を作りたい」と、夢を語ったときでした。
とたんに「あなたは私の仕事の権利を侵害することになります」と鋭く切り替えし、「日本でアサーティブネスに関する活動をする際は必ず英文で報告書を出すように」と 厳しく規約を切り出しました。
弁明の余地もなく納得せざるを得ませんでしたが、それは私には大きな負担に感じられました。
アサーティブネスの思想は万人のものではないのだろうか、広める活動をすることは、彼女の怒りを買うようなものなのだろうか・・・、混乱と暗澹とした気分で、引き揚げました。

その後、彼女も私たちも紆余曲折がありました。
でもこの間確かなことは、それぞれが創意と工夫を持って、
アサーティブネスの普及に力を注ぎ、前進してきたことです。
私は本当に夢を叶え、アサーティブネスに関する本を二冊出版しています。
(「こころのちから」「おんなごころおとこごころ」)

「こどもの城」の研修室で、私たち三人は再会しました。
今回アンディクソンさんを招聘したのはアサーティブジャパンで、
私はその活動に敬意を表して、ワークショップに駆けつけたのです。
私は「以前アンディクソンさんを訪ねました。その時、
『あなたが抱いている情熱を人々とシェアして下さい』と、
言われました。私はその励ましをずっと大切にしています」と伝えました。
彼女は「あまりに昔のことで、あなたと会ったことは覚えていないけれど、
いまもアサーティブネスを大切にしてくれていて嬉しいです」と答えました。

私は今では、当時彼女の言いたかったことが何なのか、理解出来ます。
仕事上の取り決めをすることと、情熱を分かち合うことは別の次元だということ。
あの時、地に足のつかない私は、彼女の批判を非難のように受け止めたのでした。
そして彼女も、穏やかに落ちついた風情に変身していました。
10年の歳月は私たちを供に成長させ、素敵な大人にしました。
私は今、丁度当時の彼女の年齢です。
彼女に再会して、「女はこれからだ」そんな気になりました。

その19
虹の向こう 山の彼方 飛ぶ鳥

その18
降る花

その17
春が来た 春が来た

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