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その5 掘炬燵に世界地図を広げて

オーストラリアから娘が帰り、2週間滞在していきました。合わせてアメリカから娘の友人がホームステイに来ました。静かな炬燵暮らしに、急にエネルギッシュな「海外パワー」が流れ込み、一気に辺りが華やぎました。

寒くて自分の部屋にいられなくて、2人ともすぐに炬燵に飛び込んできます。個室のヒーターでそれぞれ充分に部屋を暖めようとして、2回も家中「停電」になり、それ以来懲りて、炬燵に嵌るようになりました。真夏の南半球からでは身体に堪えるし、セントラルヒーティングの住居からでは室内も外気とかわりません。

2人の出会いは留学先のチェコでした。炬燵でパソコンを開け、当時の写真を見ながら思い出話に浸っています。
 親の知らないエピソードも聞こえてきます。時々呪文のようなチェコ語に変わるのは、秘密の話をしているのでしょう。
 私も炬燵からは抜けられないので、お茶など飲みつつ耳を澄ませます。時に会話は日本語になります。友人は高校時代に神戸に留学していたおかげで、関西弁の柔らかい日本語が話せます。彼女はチェコで娘を「発見」したとき、日本語のブラッシュアップにとルームメイトを申し出たそうです。

同じ2人なのに、別の言語を話し出すと違った風情に映ります。日本語では輪郭がぼやけて「仲良しこよし」に見えるのに、英語になるとしっかり別々に立って「意見交換」をしているようです。チェコ語ではくぐもって内面を見せ合っているような雰囲気です。

炬燵のそばに教科書の「新詳高等地図」が置いてあります。これまで娘がどこかへ飛び出していく度に、パートナーと私はそれを広げ、彼女のいる地名が載っているか確かめてきました。見つけると、娘の無事が少し約束されたように喜びました。  友人は地図をめくり、カタカナの都市名を拾いながら、「母はプエルトリコの移民。父はイギリスから。母を育てた継父はチリに住んでいるエストニア人。夫の母は日系2世。オーストリアに4年。これから住みたい国は韓国。」と話し続けます。地図の上を彷徨しているうちに、人種、民族、国籍の区分けがつかなくなり、目の前にいる若い女性の個性だけが、ひたすら輝いて見えてきました。

「なに人?」と聞かれ、答え次第で自分が有利にも不利にもなる体験を、若い2人は生き抜いています。「それより私をちゃんと見てよ」とまっすぐ言えるちからが、野太く育っているのを感じます。

私は「アサーティブネストレーニング」というコミュニケーションスキルを提供していますが、そこでの基本は「あなたと私の対等な関係」です。地球生まれの若い人を目の当たりにしながら、「やっぱり今の時代、基本は『あなたと私』だな」と、胸の奥で納得しました。

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