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第64稿 二題

政治と復讐

 現地で五月二日、アメリカで五月一日深夜世界を駆け巡る発表があった。9.11事件の首謀者とされるオサマ・ビンラディン氏殺害の報である。 イスラム教の法律に従えば「目には目を、歯には歯を」は万人の知る余りにも有名な言葉であるが、一般的には解釈を誤って居る様に感じる。「目には賠償金、歯には賠償金」とした表現が判りやすい。同害報復は認められる、が拡大報復は認めていない。
 腕を折られれば、同害の報復つまり、相手の腕を折る事以上は認めていない。で、折られると困るので賠償金を払う事となる。日本もしかり、多くの国々で用いられている慰謝料や賠償制度と同じ理論である。

 世界を動かす政治力を標榜するとすれば、今回の行動は余りにも稚拙な判断で有り行動と捉える事が出来る。

 仏教は「相手の痛みを感じ取る」事を大事にする。9.11に至ったイスラム圏の痛みは何処から始まったので有ろうか、9.11の痛みはオサマ・ビンラディンの殺害と言う考えだけであったとしたら政治では無く、只の復讐劇でしか無い。年末恒例、忠臣蔵の様に復讐劇がもて囃されるので有れば、国際的政治は無用の組織である。

 東北の震災と津波被害を受けた国民の痛みを感ずる事無く永田町の理論は各報道の中で言わずと批判をされている。当事者の痛みの目線で問題を見る能力が無いことを自らが発表しているのと変わりが無い。自分も家族もそこに住んでいれば、政治屋も官僚公僕も妙案の一つや二つ出てくるはずである。


燕と蛇

 今年も燕が巣に戻ってきた。今日最後に残った雛も含め、五匹無事に巣立ちを終えた。去年もそうであったが青大将が必ず狙いに来る。悲しいかな、垂直の壁は登り切れず又、如何にしても巣は届かない高さに位置する。斯くして、ある位置に達すると玄関の土間に墜ちる。それでも、青大将は諦めない。幾度となく繰り返す。 親鳥は警戒音を発しながら玄関の中を、外を、飛び続けるのである。墜ちる度に結構な音が聞こえてくる。三度四度墜ちると、青大将は首をつかまれ竹藪に放り込まれる。次の日、青大将は知らぬうちに巣の下で準備体操終わり、垂直の壁を登攀するのである。が、前日と同じく首筋を捕まえられる事となる。結局三度青大将は所払いに遭い、三度目は暫し歩いて逃がしたので四日目は姿を見ずに終わった。  五匹の雛が巣立つまで、どれだけの虫を親鳥は捕ってきたのであろうか。下に落ちた糞掃除をすると、水に浮かぶ夥しい虫の目玉。

 燕にも、蛇にも、政治も復讐も無い。只、刹那、刹那を脇見もせず為すことを為しているだけである。要らぬ節介に燕も青大将も何処かで笑っているに違いない。

だいもん 合掌

―第118稿―
「張暑飽閉」の「春夏秋冬」

―第117稿―
春のお便り

―第116稿―
「正月」と「障月」

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