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第43稿 火鉢
ここ4ヶ月ほど暇さえあれば火鉢を作っている、
材料は目の前を流れる「日置川」から引き上げてきた「楠」。
何年沈んでいたかは不明。落雷した後がハッキリと残っている。
長さが約6丈、太い所で4尺程。ほとんどが本堂の濡れ縁用に板に製材した。
川から引き上げられて30年した物を譲り受け、
製材してガレージで五年寝ている。
4枚だけ幅2尺弱長さ1丈7尺厚4寸で残している。
火鉢は板に出来ない空洞部分。
今日は一日遊べると、道具を広げても人生甘くは無い。
誰かがお墓参りついでに世間話をして行く。
かくして、手は動くことなく一日が過ぎていく。
意見を聴かれるでも、感想を求められるでもない。
昔話、政治の話、経済の話、年金の話、病気の話、と、
ジャンルに境はない。
ご多分に漏れず、同じ話は当たり前。
此方は聴くのが仕事、時には法話のネタも転がっている。
火鉢の季節は過ぎ、趣味が合わねば邪魔な物体。
此方が「世逃げ」すれば未完の塵。
今までに、金銭に換えた作品は無い。
職人でもなく、腕も技術もない。
まして注文も引き取りの声掛けも無い。
世間の目に晒されているモノもあるが、然りとて目に留まる事もない。
「遊於娑婆世界」経典にそんな言葉が有る
未完の火鉢 台座はまだまだ先の話
大門 合掌
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